古文)形容詞の語幹用法 「~を~み」

この記事は約5分で読めます。

はじめに

形容詞の語幹用法「~を~み」は主に和歌において使われる用法です。

ここでは私の好きな和歌で、

小倉百人一首にも載っている

瀬をはやみ 岩にせかるる 滝川の われても末に あはむとぞ思ふ

(崇徳院)

を例にこの用法を学んでいきます。





概要

形容詞の語幹用法「~を~み」は、

和歌を学ぶ上で超絶必須です。

「~を~み」はただしくは

体言語幹

「~が~ので」と訳します。





解説

崇徳院 恋77番 あなたを想う一途な気持ち

をはやみ 岩にせかるる 滝川の われても末に あはむとぞ思ふ

この和歌は、百人一首にも収録される和歌で、

崇徳院すとくいんという人物が詠んだものです。

百人一首は、

藤原定家さだいえが古今東西日本中から集めた和歌で構成した歌集で、

「小倉百人一首」ということもあります。

これは名前の通り100首からなり、「恋、春、夏、秋、冬、旅(離別)、雑」という部立てによって大別されます。

そのうち77番「恋」が、崇徳院の詠んだ上記の「瀬をはやみ 岩にせかるる 滝川の われても末に あはむとぞ思ふ」という歌なのです。

私はこの歌が百人一首でもっとも好きな歌です。(これテストに出ますよ。。。)

冗談はさておき、この歌の歌意は、

をはやみ 岩にせかるる 滝川の われても末に あはむとぞ思ふ

川瀬(川の浅いところ)の流れがはやいので、岩にせき止められる滝川の水が、二つに分かれても、後には必ず一つになるように、あの人と今は別れてもいつかはきっと逢おうと思う。

素敵な歌ですよね。

さてこのままこの歌について一本の記事が書けてしまうところですが、

それは別の機会に譲るとして、

タイトルにある「形容詞の語幹用法『~を~み』」についてみていきましょう。




語幹とは

語幹とはその字のごとく「語の幹」になるところで、その語の変わらない部分を指します。

形容詞「なし」や「悲し」でいうと、「な」「悲」が語幹です。

さきほど挙げた和歌だと

瀬をはやみ 岩にせかるる 滝川の われても末に あはむとぞ思ふ

(崇徳院)

「はやみ」

形容詞「はやし(早し)」の語幹「はや」+「み」ということになります。

語幹とはその語の変わらない「幹」になる部分




形容詞の語幹用法とは

はじめに、動詞(「流る」)、形容詞(「早し」)、形容動詞(「静かなり)」の3つの品詞を表す用言には、「語幹」と「活用語尾」というものがあります。

先述したように語幹とは、その語の変わらない「幹」となるところで、形容詞「早し」の場合、「はや」のことを指します。

一方で、活用語尾は「はやし」の「し」の部分を指します。

用言については以下もご覧ください。

さて、このことから「形容詞の語幹用法」とは、

形容詞の語幹(「早し」なら「早(はや)」)を用いたもの

ということが分かります。

形容詞の語幹用法には大きく4種類あり、

本記事ではそのうち「~を~み」に言及します。

ちなみに以下は形容詞の語幹用法の4種類を簡単にまとめたものです。

感動表現

例)あないみじ。(ああ、たいへん!)   (枕草子)

連体修飾用法

例)をかし御髪みぐしや。(すばらしい(美しい)髪だなあ)(源氏物語・若紫)

品詞の転成用法

名詞化(語幹+み・さ)

例)赤し→赤み、楽し→楽しみ、深し→深み

動詞化(語幹+がる)

例)暑し→暑がる

形容動詞化(語幹+げなり)

例)清し→清げなり

原因・理由用法(体言+を+語幹+み)

例)瀬をはやみ (川瀬の流れがはやいので)

この①~④がいわゆる形容詞の語幹用法というものです。

なお、①「感動表現」~④「原因・理由用法」というような名称は便宜上、私が個人的に呼称しているだけですので、その点はよろしくお願いします。




原因・理由用法(~を~み)

さてそれではさきほどの一覧の中の④原因・理由用法をみていきましょう。

あらためて崇徳院の和歌です。

はや 岩にせかるる 滝川の われても末に あはむとぞ思ふ

川瀬(川の浅いところ)の流れはやいので、岩にせき止められる滝川の水が、二つに分かれても、後には必ず一つになるように、あの人と今は別れてもいつかはきっと逢おうと思う。

「~を~み」があります。

これは訳すと「~が~ので」となります。

この用法は、平安時代以前の用法ですが、

平安時代も和歌においてはみられる用法です。

赤の部分は、「瀬」が体言(名詞)で、

「はや」が形容詞「はやし」の語幹「はや」です。

つまり「~を~み」は

体言語幹

という形式になります。

これはとってもとっても大切ですよ!

さてところで、

体言語幹は重要といいましたが、

なかには、

体言語幹というものも見られます。

「を」を省略したものです。

これは「山深み」というような例があり、

訳は「山の奥深くなので」となります。

このように訳は変わりません。

「瀬をはやみ」で「~を~み」を覚えて、

「を」は省略されることがあると考えておけば大丈夫です。

まあこの体言語幹は超頻出でしょう。

ここで必ず押さえてしまいましょう。

まとめ

  • 体言語幹
  • 「~が~なので」
  • 和歌で使用

 






枕詞

「~を~み」について理解ができましたでしょうか。

できたら次は枕詞についても理解していきましょう。

ここではその由来についても考察しています。

コメント

タイトルとURLをコピーしました