はじめに
これまで品詞の話をpart①~③までしてきました。以下もどうぞ。
今回は連体詞・副詞について学びます。
あまり学校では触れる機会の少ない品詞だと思いますが、ここでしっかり学んでいきましょう。
概要


連体詞も副詞も、活用しない自立語であり、修飾語です。
連体詞に関しては「小さい」「小ささ」「ちいさな」の識別ができるとOKです。
後述しますが、その観点は「活用しない」ことと「修飾語」ということです。
副詞に関しては「呼応の副詞」について理解できるとOKです。
こちらも後述しますが、古文の呼応の副詞についても学びます。
どちらも、生徒の理解度の低い内容になりますので、私たち教師がよく学んで理解しておきたいところです。
解説
修飾語
修飾語である連体詞と副詞
連体詞と副詞について学ぶ前に、まずは連体詞と副詞の働きである「修飾語」について簡単に学びます。
修飾語とは簡単にいうと
別の言葉を修飾(詳しく・説明)する語のことです。
以下が連体詞と副詞の例です。
連体詞
- あらゆる分野に詳しい。
- 我が道を行く。
- この出来事は忘れられない。
副詞
- ゆっくり歩く。
- 少し雨が降る。
- 決してあきらめない。
太字が連体詞と副詞
下線部が修飾される部分
1、「あらゆる」は「分野」を修飾し、2、「我が」は「道」を、3、「この」は「出来事」を修飾します。
また
4、「ゆっくり」は「歩く」を修飾し、5、「少し」は「降る」を、6、「決して」は「あきらめない」を修飾します。
このように副詞と連体詞は別の言葉を修飾(詳しく・説明)します。
これが修飾語です。
修飾語については以下の記事も参考にしてください。
修飾語としての用言
修飾語にはさまざまな品詞の語がありますが、たとえば下の7~9のようなものがあります。
- 走る男の子
- 走るのが速い男の子
- 静かな男の子
7~9の修飾語は、「走る(動詞)」「速い(形容詞)」「静かな(形容動詞)」で、「男の子」を修飾しています。
動詞、形容詞、形容動詞は用言といいますので、
用言には修飾語としての働きもあるということですね。
連体詞と副詞の性質
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連体詞と副詞は文の中では修飾語として働きます。
連体詞
- あらゆる/分野に/詳しい。
- 我が/道を/行く。
- この/出来事は/忘れられない。
副詞
- ゆっくり/歩く。
- 少し/雨が/降る。
- 決して/あきらめない。
太字は連体詞・副詞
下線部は修飾される部分
「/」は文節の区切り
まず、連体詞と副詞は自立語であるため、それ単体で文節を作ります。
そのため1~6の太字はすべて一文節として数えられます。
次に連体詞と副詞は活用しません。
活用とはその語の形が変わることですが、連体詞と副詞は変わりません。
動詞だと例えば「読む」を「読ま(ない)」「読み(ます)」のように活用させることができます。
しかし例えば連体詞「あらゆる」は
「あわゆら」「あらゆり」のようには活用はしません。
この連体形と副詞は活用しないということは大切です。
特に連体詞が活用しないということは、次の章にある問題において重要です。
連体詞について
【基本編】
連体詞はその名の通り、
「体言に連なる」という意味です。
ですので、連体詞の後ろには体言が来ます。
また連体詞は、先程確認したように活用しません。
【発展編】「大きい」「大きな」「大きさ」の識別問題
突然ですが「大きい」「大きな」「大きさ」が何の品詞であるか識別できますか。
実はこれはすべて違う品詞なんです。
以下の例文で確認しましょう。
- 大きいパイナップル
- パイナップルの大きさはリンゴを超える。
- 大きなパイナップル
7「大きい」は「パイナップル」を修飾しています。
また
8「大きさ」は「~は」の形をとり、「超える」という述語に対する主語になっています。
9「大きな」も「パイナップル」を修飾しています。
「大きい」の品詞
7.大きいパイナップル
7「大きい」は「~い」で終わっていることに注目したいのですが、
修飾をする品詞の中で「~い」となるのは形容詞でした。
以下の活用表をみてください。

「大きいパイナップル」の「大きい」は「パイナップル」に連なっているため連体形になるので、
この表の連体形に注目すると「い」です。
つまり
「大きい」は形容詞ということが分かります。
「大きさ」の品詞
8,パイナップルの大きさはリンゴを超える。
「大きさ」は「~は」の形をとり、「超える」という述語に対する主語になっています。
主語になれるのは名詞ですので、「大きさ」は名詞です。
「大きな」の品詞
9.大きなパイナップル
9「大きな」はまず「活用するかしないか」を確認します。
体言(名詞)を修飾していることから可能性として、
「動詞」「形容詞」「形容動詞」「連体詞」が考えられます。
〇動詞かどうか
これは「大きな」が終止形「-u」に活用させられるかで判断しましょう。
「大きく(u)」は終止形とはいえないので、「大きな」は動詞ではありませんね。
〇形容詞かどうか
形容詞ということは「大きな」が以下の表のように活用させられるということです。

この表に「~な」というものはありません。
ですので、「大きな」は形容詞でもありません。
〇形容動詞かどうか
形容動詞ということは「大きな」が以下の表のように活用させられるということです。

「大きな」は「パイナップル」という体言に連なっているので、連体形が「~な」である必要があります。
この表によると連体形は「な」です。
つまり「大きな」は形容動詞です。ということにはなりません!これが。
それでは「大きな」を他の活用形にあててみましょう。
「大きだろ」「大きで」「大きに」「大きだっ」「大きだ」「大きなら」
というようになり、言葉になっていません。
つまり「大きな」は他の活用形に活用できないというわけです。
ですので、「大きな」は形容動詞でもありません。
〇連体詞かどうか
さきにも書いたように連体詞は活用しません。
つまり「大きな」も活用しないため「大きな」は連体詞ということになります。
このように
「大きい」
「大きな」
「大きさ」の
品詞の識別は
なかなか難しいので、
ここで識別できるように
学んでいきましょう。
連体詞まとめ
- 体言に連なる
- 自立語
- 活用しない
副詞について
基本編
副詞は主に用言を修飾する語です。
たとえば
- 走るのがとても速い。
- 彼はとても静かだ。
- 彼はご飯をとても食べる。
太字は副詞
下線部は修飾される部分
10.走るのがとても速い。
これだと、「とても」は「速い」を修飾していますよね。
「速い」は形容詞です。
つまり副詞は形容詞を修飾します。
ほかに、
11.彼はとても静かだ。
「とても」は「静かだ」を修飾しています。
「静かだ」は形容動詞です。
また、
12.彼はご飯をとても食べる。
「とても」は「食べる」を修飾していますが、「食べる」は動詞です。
「動詞」「形容詞」「形容動詞」は「用言」なので、
これらのことから副詞は用言を修飾できそうですね。
しかし、副詞の説明は
「主に」用言を修飾する語
です。
「主に」とはどういうことでしょうか。
それは副詞が用言以外も修飾するということです。
たとえば、
- とてもたくさん食べる
- かなり前に食べた。
13は「とても」が「たくさん」を修飾しています。
「たくさん」は副詞なのです。
また、
14は「かなり」が「前」を修飾しています。「前」は名詞です。
このように副詞は用言のほかに副詞と名詞も修飾します。
したがって副詞は「主に」用言を修飾するというのです。
副詞
- 用言を修飾
- 副詞を修飾
- 名詞を修飾
【発展編】
副詞には3種類あります。
副詞
- ゆっくり歩く。(状態の副詞)
- 少し雨が降る。(程度の副詞)
- 決してあきらめない。(呼応の副詞)
太字は副詞
下線部は修飾される部分
それが「状態」「程度」「呼応」の3種類です。
この3種類について確認していきましょう。
状態の副詞
状態の副詞とは、動作などを詳しくする(修飾する)副詞です。
4,ゆっくり歩く
この場合、「歩く」という動作がどのような状態であるかを詳しくしているのが「ゆっくり」です。
「歩く」を修飾する副詞だと他に、
「せかせか(と)」「きびきび(と)」「まったり(と)」
などがあります。
このように、ある動作などを詳しくする副詞を「状態の副詞」といいます。
程度の副詞
程度の副詞とは、物事の状態や性質、動作などを詳しくする(修飾する)副詞です。
5,少し雨が降る。
この場合、「降る」という状態がどのような程度かを詳しくしているのが「少し」です。
「降る」を修飾する副詞だと他に、
「かなり」「よく」「たくさん」「とても」
などがあります。
このようにある状態や性質、動作を詳しくする副詞を「程度の副詞」といいます。
ただし「降る」を修飾する副詞が全部、程度の副詞になるかというとそうではなく、
たとえば、
- ざあざあと雨が降る。
「ざあざあと」などは、雨の降る状態を表しているので「状態の副詞」になります。
呼応の副詞
呼応の副詞とは、ある副詞に対して、それを受ける副詞に一定の言い方を求める副詞です。
- 決してあきらめない。
この場合、「決して」という副詞が、「あきらめない」という文節を修飾しています。
ここで注意したいのが、「決して」という副詞がある場合、その副詞の修飾する文節は「~ない」などの否定の助動詞を伴うということです。
普通は、
「決してあきらめる」などとはいいません。
「決してあきらめない」のように「ない」を必要とします。
このような副詞を呼応の副詞といいます。(もしくは「陳述の副詞」「叙述の副詞」)
なぜ「呼応」というのかというと、
「決して」と呼べば、「~ない」と応じるからです。
呼応の副詞はほかに、
「もし」→「~ば・~たら」
「きっと」→「~だろう」
「どうか」→「~てください」
「めったに」→「~ない」
などたくさんあります。
古文における呼応の副詞
これまで学んできたように現代語には副詞というものがありますが、これは古文でも同じで、古文にも副詞があります。
その中でも特に、「呼応の副詞」は定期テストや入試でよく問われるため、これは確実におさえておかなければなりません。
ここでは簡単に触れる程度ですが、下の表のよく見る呼応の副詞の例のうち、赤字になっているものは特に頻出なので、必ず理解しましょう。

この表がすべての副詞を網羅しているわけではありませんが、ひとまず赤字については覚えてしまいたいところです。
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