はじめに
動詞には「本動詞」という動詞と
「補助動詞」という動詞があります。
これに該当する動詞をみなさん結構使っていますが、
「本動詞」「補助動詞」という言葉自体を知っている人はあまりいません。
ここでは「本動詞」「補助動詞」について学んでいきましょう。
概要
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本動詞と補助動詞ではその動詞の持つ意味が異なります。
口語文法ではそれほど気にしなくても構いませんが、
文語文法ではとても必要になります。
特に文語文法の補助動詞の特徴にあるように、
敬語の補助動詞の場合、
直前の語を補助し敬意を持たします。
古文では敬語をよく理解する必要がありますので、
補助動詞自体をここでしっかりと学んでください。
解説
中学・高校での補助動詞
動詞には「本動詞」と「補助動詞」というものが存在します。
この補助動詞は、中学校では「補助・被補助の関係」という文節と文節の関係に関する内容で学習します。
以下の記事も参考にしてください。
さて「補助・被補助の関係」とはたとえば、
彼はいつも外で遊んで いる。
詳しくは後述しますが、このようなとき、「遊んで」と「いる」を「補助・被補助の関係」といいます。
ここでは「いる」が「補助動詞」です。
また、高校では、古文で「補助動詞」の知識を利用します。たとえば、
大臣、笑ひ給ひて、(大臣は笑いなさって)
このときの「給ひ」は「補助動詞」です。
このように「補助動詞」は現代語(口語文法)でも、古文(文語文法)でも知っておく必要があります。
口語文法(現代語文法)における補助動詞
さきほど書いたように「遊んでいる」の「いる」は補助動詞です。
そもそも補助動詞とは、
「その動詞の本来の意味ではなく、他の言葉を補助する意味を持った動詞」
のことです。
一方で、
本動詞とは
「その語の本来の意味を持った動詞」です。
「いる」の場合、本動詞の意味は「~がそこにいる」という「存在」です。
しかし、「遊んでいる」の場合、「いる」の意味は存在でなく、「状態・継続」の意味を表します。
このように、本来の意味(存在)を失い、別の意味(状態・継続)を表す動詞を補助動詞といいます。
ほかには、
「食べてみる」の「みる」
「書いておく」の「おく」
「捨ててしまう」の「しまう」
「人間である」の「ある」なども補助動詞です。
ちなみに補助動詞になるポイントとして、
補助動詞の直前が「~て、~で」であることがあげられます。
もちろん「人間でもある」のように
「で」と「ある」のあいだに
「も」のようなほかの助詞が入ることもありますが、
多くは「~て、~で」の直後に補助動詞がきます。
また、
表記に関してですが、
「いる」「みる」「おく」「しまう」「ある」など、
漢字で書こうと思えば
「居る」「見る」「置く」「仕舞う」「有る」などと書けますが、
これは本動詞の場合で、
今回のように補助動詞のときは、
その漢字で表せる意味は失って補助動詞になっているので、
補助動詞はひらがなで表記します。
- 本来の意味を失い、他の語を補助する。
- 「~て、~で」の直後(なことが多い)
- 普通ひらがな表記
文語文法(古典文法)における補助動詞
大臣、笑ひ給ひて、(大臣、笑いなさって)
このときの「給ひ」は補助動詞です。
さきほども書いたように、
補助動詞は
「その動詞の本来の意味ではなく、他の言葉を補助する意味を持った動詞」
のことです。
これは文語文法でも同じです。ちなみに本記事では、「給ふ」については四段活用のみにフォーカスします。下二段活用「給ふ」については別の記事にて紹介します。
さて、そもそも「給ふ」の本動詞の意味は何でしょう。
それは「お与えになる」です。たとえば、
大臣、遣ひに禄を給ふ。(大臣は遣いの者に褒美をお与えになる。)
これが「給ふ」の本動詞です。
そして「給ふ」の補助動詞は以下のようになります。
大臣、笑ひ給ひて、(大臣、笑いなさって)
さきほどの例文ですね。ここの「給ひ」は補助動詞です。
「給ふ」の補助動詞の意味は「~しなさる」です。
この補助動詞「給ふ」は直前の動詞「笑ひ」を補助し、尊敬の敬意を添えています。
このように補助動詞「給ふ」は、本来の「お与えになる」という意味を失って、
「~しなさる」」という意味を持つようになります。
ちなみに「給ふ」などの敬語の動詞が、補助動詞かどうかを見分けるポイントは
直前に動詞(「笑ひ」など)があるかどうかです。
ほかには、
- (本) 大臣、帝にたてまつる。(大臣は帝に差し上げる。)
- (補助)大臣、帝に読みたてまつる。(大臣は帝に読み申し上げる。)
「たてまつる(奉る)」にも補助動詞があり、本動詞では「差し上げる」の意味ですが、補助動詞では「~し申し上げる」という意味になります。補助動詞の直前には「読み」という動詞があります。
しかし、たとえば「さうらふ(候ふ)」の補助動詞は動詞でなく形容詞につくことがあります。
中納言、「げにおもしろうさうらふ」と申し給ふに、 (今昔物語集)
(中納言は、(大臣に)「ほんとうに趣深くございます。」と申し上げなさると
直前の「おもしろう」(形容詞「おもしろし」連用形ウ音便)という形容詞についています。このような例もありますのでご注意を。
- 本来の意味を失い、他の語を補助する。
- 直前に動詞がある(ことが多い)。
- 古文では敬語においてとても重要!!
補助・被補助の関係
ここまで「補助動詞」について学んできましたが、この補助動詞に関する文節同士の関係があります。以下の記事を参考にしてください。
たとえば「遊んでいる」の場合、「いる」は補助動詞になります。
そして「遊んで」は「いる」に補助されています。
ですので、「遊んで」と「いる」は補助・被補助の関係になります。
「いる」が「遊んで」を補助しているので、「いる」は「補助」で、
「遊んで」が「いる」に補助されているので、「遊んで」は「被補助」になります。
おそらく口語文法においては、言葉を研究するといった方向に進まないと補助動詞は必要ない知識かもしれませんが、
文語文法においては、非常に重要です。特に「敬語」は入試でも必ず問われるところで、意外と補助動詞の知識が求められている問いも多く見受けられます。
ですので、文語文法においては補助動詞は必ず理解したいところです。
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