2春すぎて 夏来にけらし 白妙の 衣ほすてふ 天の香具山 持統天皇

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春すぎてはるすぎて 夏来にけらしなつきにけらし 白妙のしろたえの
衣ほすてふころもほすちょう 天の香具山あまのかぐやま

作者

持統天皇

百人一首1番「秋の田の かりほの庵の 苫をあらみ わが衣手は 露にぬれつつ」を詠んだ、

天智天皇の皇女で41代天皇。

皇女とは天皇の娘のことである。

品詞分解

単語品詞
名詞
過ぎ動詞・ガ行上二段・連用形
接続助詞
名詞
動詞・カ変・連用形
助動詞・完了・連用形
助動詞・過去・連体形の一部
らし助動詞・推定・終止形
白妙名詞
格助詞
名詞
ほす動詞・サ行四段・終止形
てふ連語
天の香具山名詞

解釈

春が過ぎて夏が来てしまったらしい。夏には白い衣を干すという天の香具山に、衣が干されているのだから。

解釈詳細

万葉集には

「春過ぎて 夏来たるらし 白妙の 衣ほしたり 天の香具山」とある。

百人一首が「衣ほすてふ」という伝聞形式(後述します)をとっているのに対し、

万葉集は「衣ほしたり」と直接的にその情景を歌っている。

春過ぎて

春が過ぎて

〇春

旧暦の春は1~3月にあたる。

夏来にけらし【二句切れ】

夏が来てしまったらしい

〇夏

旧暦の夏は4~6月

順に

秋は7~9月

冬は10~12月となる。

〇けらし

もともとは、

過去の助動詞「けり」の連体形「ける」+推定の助動詞「らし」で

「けるらし」であった。音がつづまって「けらし」になった。

なお、「らし」は根拠を求める推測で、それを推定という。

ここでの根拠は、後に続く「白妙の衣ほすてふ天の香具山」である。

さらに、ここの「らし」は終止形であるため、二句切れとなる。

白妙の【枕詞】

白い

〇白妙の

「白妙」とはコウゾなどで作った白い布のこと。

そのことから、繊維状のものや白いものを導く枕詞である。

枕詞についてはこちらに覚え方も含め詳しく解説しているのでご覧ください。

「白妙の」は「衣」を導く。

また本来、枕詞は訳出しないが

ここでは「白い」と訳出して、あとの「衣」を修飾し、「白い衣」という句を作る。

衣ほすてふ

衣を干すという

〇てふ

読み方は「ちょう」である。

「といふ」がつづまったもので伝聞形式をとる。

伝聞形式をとることで、

天の香具山には夏になると衣を干すという伝承を意識させる。

天の香具山【体言止め】

天の香具山に

〇天の香具山

奈良県橿原かしはら市にある山で、大和三山やまとさんざんの一つである。

大和三山は香具山、畝傍山うねびやま耳成山みみなしやまのこと。

香具山は天からおりてきたきた山といわれており、

その神話性から「天の」を関する。

また四句目で「てふ」という伝聞形式をとることで、

神話性をさらに高めているといえよう。

体言止めは、体言(名詞)で和歌を終わらす表現技法で、余韻を残す。

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