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歌
あしびきの 山鳥の尾の しだり尾の
ながながし夜を ひとりかも寝む
作者
柿本人麻呂
飛鳥時代の歌人で、三十六歌仙の一人。
百人一首4番の
「田子の浦に うち出でてみれば 白妙の 富士の高嶺に 雪は降りつつ 」を詠んだ、
山部赤人とともに歌聖と称される。
万葉集にも多くの歌が掲載されているが、
柿本人麻呂に関する書物は多くなく、
詳細はわかっていない。
品詞分解
単語 | 品詞分解 |
あしびき | 名詞 |
の | 格助詞 |
山鳥 | 名詞 |
の | 格助詞 |
尾 | 名詞 |
の | 格助詞 |
しだり尾 | 名詞 |
の | 格助詞 |
ながながし | 形容詞・シク活用・終止形 |
夜 | 名詞 |
を | 格助詞 |
ひとり | 名詞 |
か | 係助詞 |
も | 係助詞 |
寝 | 動詞・ナ行下二段・未然形 |
む | 助動詞・推量・連体形 |
解釈
山鳥の垂れている長い尾のように、長い長い夜を一人で寝るのでしょうか。
解釈詳細
愛しい人と会えずに、長い長い夜を一人で寝ないといけない寂しさを詠んだ歌である。
万葉集にも同様の歌が掲載されているが、
万葉集では
「あしびきの」ではなく
「あしひきの」とある。
これは中世以降に濁音化したといわれる。
また万葉集では「よみ人知らず」とあり、
この和歌を本当に柿本人麻呂が詠んだかは定かではない。
あしびきの【枕詞】
枕詞のため訳なし
枕詞は原則訳さない。
枕詞についてはこちらもご覧ください。
「あしびき」とは諸説あるが、
足を引いて山を登ることや、山裾が長く引くことを意味するといわれ、
そのため「山」などを導く。
また「山鳥」を導いているともいわれる。
山鳥の尾の
山鳥の尾の
山鳥はその尾がとても長い。
ちなみに、雄のほうが雌よりも尾の長さが格段に長い。
また、山鳥は古くは、夜になると雄と雌は谷を隔てて寝ていたといわれていた。
それらのことも一層歌の情趣を引き立てる。
しだり尾の【序詞】
垂れている長い尾のように
「しだり尾」は長くて垂れている尾のこと。
「あしびきの 山鳥の尾の しだり尾の」までが序詞。
序詞とは枕詞同様に、ある語を導く働きをする。
ここでは「ながながし」を導く。
枕詞は原則訳出しないが、序詞は訳をとるので注意する。
なお、格助詞「の」には
・主格
・連体格
・準体格
・同格
・比喩
の5つの用法があり、
和歌において「比喩」の用法でそこまでを序詞にすることが多い。
詳しくはこちらをご覧ください!
ながながし夜を
長い長い夜を
「ながながし」が終止形ではあるが、ここは「夜」を修飾していると考えられる。
ひとりかも寝む【係り結び】
一人で寝るのでしょうか。
「か」は疑問の係助詞で、推量の助動詞「む」の連体形にかかる。
これを係り結びの法則という。
係助詞「も」はここでは強意の用法で、詠嘆のニュアンスを与える。
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