はじめに
係り結びの法則について3部に分けています。
本記事は第1部にあたります。
【第1部】
係り結びの法則というものが何なのか
生徒も十分理解できるように根本から説明をするつもりです。
【第2部】
係助詞「ぞ・なむ・や・か・こそ」および反語「やは」「かは」について、
例文を用いて一つ一つ丁寧に解説をしています。
係り結びの法則のつまずきはここで解消しましょう!
【第3部】
係り結びの法則の応用として、
係り結びの省略
係り結びの流れ・消滅・消去
係り結びの逆説用法
について2~3つずつ例文を用いて丁寧に説明をしています。
解説
係助詞とは
係助詞は「けいじょし・かかりじょし」と読みます。
文中(や文末)について、
強意・疑問・反語
といった意味をそえます。
口語(現代語)では
は・も・こそ・さえ・でも・しか・しも・ほか
などが挙げられます。
私には彼こそが必要だ。
私には彼しか見えない。
などのように使います。
しかし、
口語文法の係助詞は聞かれないので、
ここでは無視します。
そして、
文語(古文)では、
は・も・ぞ・なむ・や・か・こそ
が挙げられます。
「なむ」は「なん」と読みます。
この理由は「なむ」の章で説明します。
古文における係助詞
ここからが本題ですが、
まずは必殺の呪文を覚えてください。
ぞ・なむ・や・か・こそ。こそは已然形
係助詞「は」「も」はあまりテストで問われないので、呪文の中には入れていません。
ただし、次章で解説は行ないます。
何度も唱えてリズムで覚えてくださいね!
係り結びの法則とは
通常、
文は例文①②のように
終止形か命令形で終わります。
①いと幼ければ、籠にいれて養ふ。(終止形)
(とても幼いので、籠にいれて養う。)
②帝、篁に「読め。」と、(命令形)
(帝は、篁に「読め」と、)
しかし
係助詞「は・も・ぞ・なむ・や・か・こそ」が文中にあると、
係助詞が結びの語に特定の活用形を要求します。
これを係り結びの法則といいます。
なお、
ここでいう「結びの語」とは、
以下の例の下線部「けり」のことです。
後述しますが、
係助詞「は」は、
終止形を要求します。
③今は昔、比叡の山に児ありけり 。
(今となっては昔のことだが、比叡山に小さい子がいた。)
活用形についてはこちらもご覧ください。
さて、
「は・も・ぞ・なむ・や・か・こそ」のうち、
「は・も」は終止形を、
「ぞ・なむ・や・か」は連体形を、
「こそ」は已然形を
結びの語に要求します。
係助詞は必ず文末で結ぶのか?
さきほど、
「は・も」は終止形を、
「ぞ・なむ・や・か」は連体形を、
「こそ」は已然形を
結びの語に要求すると説明しました。
詳しいことは後述しますが、
ここで一つ注意が必要なのが、
結びの語が文末にあるとは限らない
ということです。
多くの生徒は、
結びの語=文末
と思い込んでいることがあります。
しかし決してそのようなことはありません。
男はこの女をこそ得めと思ふ。
男はこの女を手に入れたい(=妻にしたい)と思う。
太字は係助詞・下線部は結びの語
この文は一見、
文末が「思ふ」なので、
係助詞「こそ」が
「思ふ」で結んでいて、
「思ふ」は連体形だと思いがちです。
しかし、実際は
係助詞「こそ」が結んでいるのは
推量・意志「む」の已然形「め」です。
男はこの女を得むと思ふ。
↓「こそ」
男はこの女をこそ得めと思ふ。
男はこの女を手に入れたい(=妻にしたい)と思う。
太字は係助詞・下線部は結びの語
なぜかというと
「こそ」は
(詳しくは後述しますが)強意という
ほかの語を強調する働きがあるからです。
男はこの女をこそ得めと思ふ。
男はこの女を手に入れたい(=妻にしたい)と思う。
太字は係助詞・下線部は結びの語
例文の「こそ」は
「この女を」に係って、
ほかならぬこの女のことなのだっ!
と強調しています。
そして
「この女」を「得よう」と思っているわけです。
だから「こそ」は
「得む」の「む」で結び、已然形「め」にしているのです。
このように、
必ずしも係助詞が文末で結ぶとは限りません。
ただ、この例文においては
「こそ」が
「思ふ」ではなく、
「む」で結んでいる理由を
文末であるからと説明できます。
男はこの女をこそ得めと思ふ。
男はこの女を手に入れたい(=妻にしたい)と思う。
太字は係助詞・下線部は結びの語
文中の「と」に注目します。
この「と」は引用の「と」といわれ、
そこでいったん文を終止させるような働きをします。
イメージとしては会話文が終わるようなものです。
「男はこの女をこそ得め。」と思ふ。
はこの女を手に入れたい(=妻にしたい)と思う。
太字は係助詞・下線部は結びの語
このように考えると
結びの語は文末であるともいえそうです。
しかしあくまで
どの語で結んでいるのかは
安直に文末だからと考えず、
意味で判断しなくてはなりません。
係助詞「は・も」
ここでは
係助詞「は・も」
について確認しますが、
残念ながら
テストには出ません。
なぜなら、
要求する活用形が終止形だからです。
通常の文は終止形で終わるのですから、
わざわざテストで問う意味があまりありません。
とはいえ、係助詞「は・も」の用例を確認しておきます。
以下が挙げられます。
「けり」は終止形です。
③今は昔、比叡の山に児ありけり。
(今となっては昔のことだが、比叡山に小さい子がいた。)
④名をば、讃岐造と(中略)
(名前を讃岐造と)
⑤腹立たしきことも慰みけり。
(腹立たしいことも気が晴れた。)
太字は係助詞・下線部は結びの語
「をば」の「ば」は係助詞「は」
ここで注意しておくのは、
④「名をば、」の「ば」です。
実はこれも係助詞「は」なのです。
係助詞「は」は
格助詞「を」に接続すると濁音化して「ば」になります。
そして、格助詞「を」が接続する語(ここでは「名」)を強調します。
係助詞「は・も」で確認したいのはこれくらいでしょうか。
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