はじめに
係り結びは全3部構成です。
今回は第2部です。
【第1部】
係り結びの法則というものが何なのか
生徒も十分理解できるように根本から説明しています。
【第2部】
係助詞「ぞ・なむ・や・か・こそ」および反語「やは」「かは」について、
例文を用いて一つ一つ丁寧に解説をしています。
係り結びの法則のつまずきはここで解消しましょう!
【第3部】
係り結びの法則の応用として、
係り結びの省略
係り結びの流れ・消滅・消去
係り結びの逆説用法
について2~3つずつ例文を用いて丁寧に説明をしています。
解説
係助詞「ぞ・なむ・や・か」
【必殺の呪文】
ぞ・なむ・や・か・こそ。こそは已然形
このうちまず最初に
ぞ
なむ
や
か
について考えています。
これはテストに出ますよ!
「なむ」の読み方は「なん」ですよ。
さて、
4つの係助詞の共通点は、
結びの語に連体形を要求するというこです。
以下の例文⑥~⑪の下線部は
すべて連体形です。
【ぞ】
⑥「(中略)言ひ比ぶべからず。」とぞ侍りし。
((中略)言い比べることはできない。」とございました。
【なむ】
⑦讃岐造となむいひける。
(讃岐造と言った。)
【や】
(春は昔の春ではないのでしょうか。)
(このようなことがあるでしょうか、いや、ないでしょう。)
【か】
(どのようなであるのか。)
⑪なににかはせむ
(いったい何のためになるのでしょうか、いや、何のためにもならない)
太字は係助詞・下線部は結びの語
一つずつ確認していきます。
強意の係助詞「ぞ」
⑥「(中略)言ひ比ぶべからず。」とぞ侍りし。
(中略)言い比べることはできない。」とございました 。
太字は係助詞・下線部は結びの語
【結び方】
「(中略)言ひ比ぶべからず。」と侍りき。
↓「ぞ」
⑥「(中略)言ひ比ぶべからず。」とぞ侍りし。
【意味】
強意
特に訳さなくて大丈夫です。
また後出の
なむ・こそ
も強意ですが、
強調の度合いが違います。
「こそ」が一番強く
「ぞ」が次に強く、
そして「なむ」です。
こそ>ぞ>なむ
【用法】
係助詞「ぞ」があることで、
結びの語が連体形になります。
例文だと、
過去の助動詞「き」が
連体形「し」になっています。
強意の係助詞「なむ」
⑦讃岐造となむいひける 。
(讃岐造と言った。)
太字は係助詞・下線部は結びの語
【結び方】
讃岐造といひけり 。
↓「なむ」
⑦讃岐造となむいひける 。
【読み】
「なん」と読みます。
これは平安時代にはもう
「なむ」を
「なん」と読んでいましたが、
当時はまだ「ん」という表記がなかったため
「む」のままで「ん」と読んでいたといわれています。
【意味】
強意
【用法】
係助詞「なむ」があることで、
結びの語が連体形になります。
例文だと、
過去の助動詞「けり」が
連体形「ける」になっています。
疑問の係助詞「や」
⑧春や昔の春ならぬ。
(春は昔の春ではないのでしょうか。)
太字は係助詞・下線部は結びの語
【結び方】
春昔の春ならず。
↓「や」
⑧春や昔の春ならぬ。
【意味】
疑問
反語(次節で説明)
疑問の訳は
「~か」
です。
【用法】
係助詞「や」があることで、
結びの語が連体形になります。
例文だと、
打消の助動詞「ず」が
連体形「ぬ」になっています。
反語の係助詞「や」(やは)
⑨かかるようやはある。
(このようなことがあるでしょうか、いや、ないでしょう。)
太字は係助詞・下線部は結びの語
【結び方】
かかるようあり。
↓「やは」
⑨かかるようやはある。
【意味】
疑問(前節で説明済み)
反語
反語の訳は
「~か、いや、~ない。」
です。
ちなみに、例文のように
⑨かかるようやはある。
(このようなことがあるでしょうか、いや、ないでしょう。)
「やは」とあるときは、
反語であることが多いです。
【用法】
係助詞「や」があることで、
結びの語が連体形になります。
例文だと、
ラ変動詞「あり」が
連体形「ある」になっています。
ラ変動詞についてはこちらもご覧ください。
疑問の係助詞「か」
⑩いかようにかある。
(どのようなであるのか。)
太字は係助詞・下線部は結びの語
【結び方】
いかようにあり。
↓「か」
⑩いかようにかある。
【意味】
疑問
反語(次節で説明)
疑問の訳は
「~か」
です。
【用法】
係助詞「か」があることで、
結びの語が連体形になります。
例文だと、
ラ変動詞「あり」が
連体形「ある」になっています。
反語の係助詞「かは」
⑪なににかはせむ
(いったい何のためになるのでしょうか、いや、何のためにもならない)
太字は係助詞・下線部は結びの語
【意味】
疑問(前節で説明済み)
反語
反語の訳は
「~か、いや、~ない。」
です。
ちなみに、例文のように
⑪なににかはせむ
(いったい何のためになるのでしょうか、いや、何のためにもならない)
「かは」とあるときは、
反語であることが多いです。
【用法】
係助詞「か」があることで、
結びの語が連体形になります。
例文だと、
推定の助動詞「む」が
連体形「む」になっています。
※助動詞「む」は
終止形と連体形が同じ形ですが、
ここでは係り結びの法則で、
連体形になります。
係助詞「こそ」
係助詞「ぞ・なむ・や・か」でも確認しましたが、
もう一度必殺の呪文を確認しておきましょう。
ぞ・なむ・や・か・こそ。こそは已然形
それではこれを念頭に置いて
係助詞「こそ」の例文を確認しておきましょう。
【結び方】
「隆家いみじき骨は得て侍り。」
↓「こそ」
⑫ 「隆家こそいみじき骨は得て侍れ。」
【意味】
強意
特に訳さなくて大丈夫です。
ぞ・なむ
も強意ですが、
強調の度合いが違います。
「こそ」が一番強く
「ぞ」が次に強く、
そして「なむ」です。
こそ>ぞ>なむ
【用法】
係助詞「ぞ・なむ・や・か」は
結ぶ語が連体形になりました。
一方で、
係助詞「こそ」があることで、
結びの語が已然形になります。
例文だと、
ラ変動詞「侍り」が
已然形「侍れ」になっています。
ラ行変格活用動詞のことを
ラ変
といいます。
ラ変についてはこちらもご覧ください。
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