はじめに
今回は「ない」という語について学んでいきましょう。
はじめに確認しておきますが、
「ない」には
①助動詞「ない」
②形容詞「ない」
③(補助)形容詞「ない」
④形容詞の一部「ない」
の4つがあります。
例文は以下の通りです。
①元気が出ない
②元気がない
③元気ではない
④頼りない
それではそれぞれの識別方法を確認していきましょう。
概要
①について、
付属語は自立語につかないといけないので、
付属語である助動詞「ない」はそれ単体では文節になりません。
一方で
②、③について
自立語はそれ単体で文節になるので、
自立語である形容詞はそれ単体で文節になります。
また③について、
補助形容詞とは、
本来の意味から離れて用いられる形容詞のことです。
したがって、
この形容詞「ない」のうち、
本来の意味「不在」ではない、
「否定」を表す「ない」を補助形容詞といいます。
解説
①助動詞「ない」
①元気が出ない
②元気がない
③元気ではない
④頼りない
ここでは
①元気が出ない
について解説します。
まずポイントは
- 動詞(の未然形)に接続している
- 動詞の意味を打ち消している
この2つです。
つまり
助動詞「ない」には、
接続する動詞を打ち消す働きがあります。
ここでは、
①「元気が出る」の動詞「出る」を打ち消して「出ない」となっています。
ですので、「動詞に接続している」という点から
①「元気が出ない」の「ない」が助動詞ということになります。
また、
打ち消しの助動詞「ない」が接続するのは、
動詞の「未然形」になります。
活用形については以下をご参照ください。
加えて、
助動詞「ない」は
「食べられない」
のように、
他の助動詞(ここでは「られ」)を打ち消すこともできます。
よってここまでのことをまとめると、
- ☆動詞(の未然形)に接続
- 動詞の意味を打ち消す
- 助動詞(の未然形)にも接続
とまとめられます。
大切なポイントは、動詞に接続するということです。
②形容詞「ない」
①元気が出ない
②元気がない
③元気ではない
④頼りない
②元気がない
の「ない」は形容詞です。
①で確認した
①元気が出ないの助動詞「ない」との違いは、
動詞や助動詞には接続しない
ということです。
②元気がないの「ない」は助詞「が」に接続しています。
このように、
動詞や助動詞ではないものに接続する場合、
「ない」は形容詞となります。
ただし形容詞の「ない」にも2種類があります。
- 動詞や助動詞ではないものに接続する
- 形容詞「ない」には二種類ある(次節)
③補助形容詞「ない」
①元気が出ない
②元気がない
③元気ではない
④頼りない
まず補助形容詞とは、
本来の意味を離れて用いられる形容詞のことです。
形容詞「ない」の場合を見てみましょう。
形容詞「ない」の本来の意味は「不在」です。
しかし
「不在」の意味を離れ「否定」として用いられることもあります。
例えば、
②「元気がない」の「ない」が不在を表します。
「元気」が「不在」(存在しない=ない)であると考えられます。
一方で、
③「元気ではない」の「ない」は
「元気」が不在であることを表しているというよりも、
「元気」を「否定」しているものです。
さきほども書いたように、
形容詞「ない」のもともとの意味は「不在」です。
一方で
もともとの「不在」の意味を離れ「否定」の意味を表すことがあります。
それが補助形容詞「ない」です。
補助形容詞は形式形容詞といわれることもあります。
- 形容詞「ない」には「不在」と「否定」の意味がある。
- 「不在」がもともとの意味
- もともとの意味を離れた「否定」の方を補助形容詞という
④形容詞の一部
①元気が出ない
②元気がない
③元気ではない
④頼りない
④の「頼りない」のように形容詞の一部になっているものがあります。
ほかには
「はかない」
「おぼつかない」
「情けない」
などがあげられます。
自立語と付属語
①元気が/出ない←助動詞
②元気が/ない←形容詞
③元気では/ない←補助形容詞
④頼りない←形容詞の一部
/は文節の区切れを表します。
付属語は、助詞と助動詞のことです。
一方で
自立語は、付属語以外です。
また自立語はそれだけで文節を作れますが、
付属語は、それだけで文節を作れません。
常に自立語とセットで文節になります。
①「ない」は
助動詞なので付属語です。
したがって
「出」と分けて文節を作ることはできません。
一方で、
②、③「ない」は
形容詞なので自立語です。
したがって
「が」「では」と分けて文節を作れます。
「ない」の識別は文節に区切る問題で有効です。
ちなみに文節や自立語・付属語の関連内容は以下からご覧ください。
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