はじめに
「給ふ」には4つの使い分けがあることを知っていましたか。
この違いは共通テストや二次試験でも問われることなので、
今回その違いを理解して、識別できるように頑張りましょう!
そして今回の目標はこの例文を訳せることです!
1.大臣、人に禄を選び給ひて、給ひけれど、給へざりけりと聞き給へけり。
作:みかたんご
概要
上記表からわかるように「給ふ」には
尊敬の本動詞「お与えになる」
尊敬の補助動詞「~なさる」
謙譲の本動詞「いただく」
謙譲の補助動詞「~です、~ます、~させていただく」
があります。
尊敬用法は四段活用
謙譲用法は下二段活用です。
また、
本来の意味を有しているのが本動詞
本来の意味を失いほかの語を補助しているのが補助動詞です。
これらを識別していきましょう!
なお、謙譲の本動詞「いただく」は上代(奈良時代まで)の語なので、
基本的に共通テストや二次試験、定期テストでは問われません。
解説
〈手順①〉活用の種類を確認
1.大臣、人に禄を選びA給ひて、B給ひけれど、C給へざりけりと聞きD給へけり。
説明の便宜上、各「給ふ」をA~Dとしておきます。
まず初めに各「給ふ」の活用の種類を確認します。
A「給ひ」は
接続助詞「て」を伴っているので連用形で、
かつ
「ひ(hi)」という「i」の母音になるので四段活用です。
B「給ひ」は
過去の助動詞「けり」を伴っているので連用形で、
かつ
「ひ(hi)」という「i」の母音になるので四段活用です。
A、Bどちらも単に、
四段活用と下二段活用で母音が「i」になるのは四段活用の連用形だけなので、
だから四段活用の連用形と考えても大丈夫です。
四段活用に不安のある方はこちらもご覧ください。
1.大臣、人に禄を選びA給ひて、B給ひけれど、C給へざりけりと聞きD給へけり。
A、B「給ひ」・・・四段活用
C「給へ」は
打消の助動詞「ず」を伴っているので未然形で、
かつ
「へ(he)」という「e」の母音になるので下二段活用です。
D「給へ」は
過去の助動詞「けり」を伴っているので連用形で、
かつ
「ひ(he)」という「e」の母音になるので下二段活用です。
下二段活用に不安のある方はこちらもご覧ください!
1.大臣、人に禄を選びA給ひて、B給ひけれど、C給へざりけりと聞きD給へけり。
A、B「給ひ」・・・四段活用
C、D「給へ」・・・下二段活用
〈手順②〉本動詞と補助活用を確認
1.大臣、人に禄を選びA給ひて、B給ひけれど、C給へざりけりと聞きD給へけり。
A、B「給ひ」・・・四段活用
C、D「給へ」・・・下二段活用
概要のところで、
「本来の意味を有しているのが本動詞
本来の意味を失いほかの語を補助しているのが補助動詞です。」
と説明しました。
この説明は正しいのですが、あくまで動詞の意味が分かっている前提です。
意味が分からない場合はどうすればよいでしょうか。
方法は簡単で、直前に動詞があるかどうかです。
詳しくはこちらにありますのでご覧ください。
Aは動詞に接続しているので補助動詞
Bは動詞に接続していないので本動詞
Cは動詞に接続していないので本動詞
Dは動詞に接続しているので補助動詞
です。
1.大臣、人に禄を選びA給ひて、B給ひけれど、C給へざりけりと聞きD給へけり。
A…四段活用・補助動詞
B…四段活用・本動詞
C…下二段活用・本動詞
D…下二段活用・補助動詞
〈手順③〉意味を確認
ここまでくればあとは簡単です。
四段活用は尊敬語
下二段活用は謙譲語
になります。
四段活用と下二段活用で敬語の種類が違うのは
「主体の転換」が関与しています。
「主体の転換」について学びたい方はこちらもご覧ください!
また敬語の種類について学びたい方はこちらもご覧ください!
上2記事を踏まえると、
四段活用では
「貴人(=主体)が私にお与えになる」
で尊敬語だったものが、
下二段活用では
「私(=主体)が貴人からいただく」
で謙譲語になったという具合です。
そして本動詞・補助動詞についてもまとめると以下のように言えます。
意味についてはある程度暗記していきましょう。
1.大臣、人に禄を選びA給ひて、B給ひけれど、C給へざりけりと聞きD給へけり。
A四段活用 尊敬の本動詞「お与えになる」
B四段活用 尊敬の補助動詞「~なさる」
C下二段活用 謙譲の本動詞「いただく」
D下二段活用 謙譲の補助動詞「~です、~ます、~させていただく」
尊敬語:赤字 謙譲語:青字
つまり訳はこのようになります。
このようにして4つの「給ふ」を識別していきましょう!
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